呼吸器内科
呼吸器内科
急性気管支炎の多くは、かぜ症候群での上気道の急性炎症が気管から気管支へとおよぶことで発症します。原因としては、かぜ症候群と同様にウイルスによるものが多いといわれています。ウイルス感染に引き続いて、二次性の細菌感染が起こり、肺炎にいたる場合もあります。
主な症状としてはせき、たんがあげられます。発熱、食欲不振、全身倦怠感といった全身症状を伴うこともあります。軽症なことが多いのですが、発熱、せきなどの症状が長引く場合には、肺炎や肺結核の可能性が考えられるため、胸部エックス線もしくは胸部CTで確認する必要があります。
肺炎は、細菌やウイルスなどの病原微生物が肺に感染して炎症を起こす病気です。呼吸にかかわる重要な臓器である肺の炎症であるため、急速に進行し致命的になることもまれでなく、わが国における死因の上位を占めます。
一般的にはせき、たん、息切れ、胸の痛み、発熱などの症状がみられます。そのほかにだるさ、頭痛、吐き気、筋肉痛、関節痛、動悸、腹痛や下痢といった症状がみられることもあります。ただし高齢者では、体を守る免疫力が低下していることもあり、せき、たん、発熱などの症状がなく、発見や診断が難しい場合もあります。おもに診察所見、胸部エックス線、血液検査などで診断します。肺炎と診断した場合、たんなどから原因微生物を調べる検査を追加し、判明した病原微生物に対する抗菌薬で治療します。
結核菌による慢性的な肺炎です。結核菌はヒトからヒトに感染する細菌です。感染すると肺の中に炎症を起こしますが、他の細菌による肺炎と異なり、ゆっくり炎症が進んでいきます。せき、たん、だるさ、発熱、寝汗、体重減少などの症状が出ます。ただし、感染しても発病する人は10%程度とされており、多くの人は感染に抵抗して免疫が出来ますが、高齢になったり、免疫力が落ちたりしたときに発病することがあります。せきやくしゃみをしたときに出る飛沫(しぶき)に結核菌が含まれており、その飛沫を吸うと感染します。食器などの物から結核がうつることはありません。
感染症法で二類感染症に指定されており、たんを直接顕微鏡で観察し菌がみえる場合は隔離病棟への入院が必要になります。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは、従来、慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称です。タバコの煙を主とする有害物質を長期に吸い込むことで生じた肺の炎症性疾患であり、「タバコ病」ともいわれます。また長年の喫煙習慣のある中高年の方に発症する生活習慣病ともいえます。有害物質を吸入することで炎症が起こり、その結果、気道(気管支)が狭くなり、また気管支の末端にある肺胞(酸素と二酸化炭素の交換を行う)が破壊される病気です。
日本では40歳以上の人口の8.6%、約530万人の患者が存在すると推定されていますが、多くの人が未診断、未治療の状態であると考えられます。それは、この病気が年単位でゆっくり進行するため初期には症状に気づきにくいためです。
喫煙者(禁煙した人もふくむ)の長引くせきやたん、息切れなどではこの病気の可能性を考え、早めに専門医に相談する必要があります。
気管支喘息は気道に慢性的な炎症が続き、さまざまな刺激に対して気道が敏感(気道過敏性の亢進)になって発作的に狭くなることを繰り返す病気です。炎症の原因はダニやハウスダスト、ペットのフケ、カビなどに対するアレルギーによることが多いです。発作的にせきやたんが出て、気道の狭窄にともなってゼーゼー、ヒューヒューという音(喘鳴)を伴った呼吸となり息苦しくなり、重症例では死に至ることもあります(喘息死)。
喘息発作は夜間や早朝に出やすいのが特徴です。
肺の表面に穴が空き肺が虚脱した(しぼんだ)状態です。呼吸困難や胸痛がおもな症状です。肺の外側にある肺のう胞が破れることによって起こる自然気胸や、元々肺の病気がある所におこる続発性気胸、胸部の外傷によって起こる外傷性気胸、生理に伴って起こる月経随伴性気胸などがあります。空気の漏れが多いと反対側の肺まで圧迫してしまい急速に命が危なくなります(緊張性気胸)。しぼみ方が軽ければ経過観察となりますが、ひどい場合は胸壁より管を入れて肺をふくらませる処置が必要となります(胸腔ドレナージ)。更に穴がふさがらない場合は、全身麻酔下での手術が必要な場合もあります。
空気の通り道である気道(上気道)が狭くなることが原因で睡眠中に無呼吸を繰り返し、様々な合併症を起こす病気です。肥満者に多い病気ですが、それは首まわりの脂肪の沈着が多いほど上気道は狭くなりやすいからです。また扁桃肥大、舌が大きいことや、鼻炎・鼻中隔弯曲といった鼻の病気も原因となります。
いびき、夜間の頻尿、日中の眠気や起床時の頭痛などを認めます。日中の眠気は、作業効率の低下、交通事故や労働災害の原因にもなります。問診などでSASが疑われる場合は、携帯型装置による簡易検査や睡眠ポリグラフ検査(PSG)にて睡眠中の呼吸状態の評価を行います。
精神的不安や極度の緊張などにより過呼吸の状態となり、血液が正常よりもアルカリ性となることで様々な症状を起こす状態です。神経質な人、緊張しやすい人などで起きやすいとされます。
過呼吸状態になると、血液中の炭酸ガス濃度が低くなり、呼吸中枢により呼吸が抑制され、息苦しさを感じます。このために余計何度も呼吸しようとします。血液がアルカリ性に傾くことで血管の収縮が起き、手足のしびれや筋肉のけいれんなども起きます。
このような症状のためにさらに不安を感じて過呼吸状態が悪化する悪循環になります。
肺がんは、肺に発生する悪性腫瘍で肺そのものから発生したものを原発性肺がんといい、通常肺がんといえば原発性肺がんを指します。一方、他の臓器から発生し、肺に転移したものを転移性肺がん、または、肺転移と呼びます。
基本的にがんの性質は、どの臓器から発生したかで決まります。肺がんは、早期であれば手術が最も治癒の期待できる治療法ですが、発見された時には進行している場合が多く、手術のほかに放射線治療や抗がん剤治療、さらにこれらを組み合わせた治療が選択されます。
肺には酸素と二酸化炭素を交換するためたくさんの肺胞という袋がありますが、肺胞と肺胞の間を間質といいます。この間質が固くなり(線維化)、肺全体が固くなることで肺活量が低下したり、酸素を取りこみにくくなったりするのが間質性肺炎です。肺線維症ともいいます。
肺だけに病気がある場合(特発性)の他、リウマチなどの膠原病に伴うものや喫煙と関連するものなどがあり、徐々に進行するものから急速に悪化するものまで様々なタイプがあります。症状としては、だんだん悪くなる呼吸困難、息切れ、たんの出ないせきなどが挙げられます。